【旅行記】香川4日目(豊島)【2023】
高松港から行く、ふたつめの島は豊島。
前回の記事はこちらから。
今日も始発便に乗り込む。雲ひとつない晴天に凪いだ瀬戸内らしい海でテンションが上がる。
どうしても晴れた日に行きたかった島だったので、こんなに好都合なことはない。
澪(船の航跡)を見るのが好きなので後部デッキに座る。朝一にしては珍しく観光客が多くいた。外国からの団体もいて、豊島が人気な島なのだと気づく。
ここから30分ほどの船旅だ。
豊島
家浦港に到着。直島での自転車と散歩で脚がクタクタだったので、豊島探索には原付を借りることにした。
電動バイク!パワーはないが加速に感動した。お店の人の説明を受け、予備バッテリーをシート下に入れて出発する。長いこと乗っていたのがYAHAMAのVOXだったからだいぶ小さく感じた。
島にはいくつかの美術館が点在していて、今日はそれをめぐる予定だ。
一番のお目当である豊島美術館の開館まではまだ時間があるので、とりあえずうろついてみる。
豊島で画像検索をすると出てくるところ。さすがに綺麗だ。このためだけでも晴れた日に来たかいがある。
バスがまだ通っていない時間だったせいか人が少なく写真も撮りやすかった。
豊島美術館はこのすぐ隣にあるが、一旦スルーして道なりに進んでいく。
豊島もアップダウンの激しい島なので、坂をずーっと下るとわっと広がった海岸にたどり着く。海と空の青さがはっきりしていて最高だ…
ちなみに見えている船は、ここからすぐ近くの唐櫃港に着港する。香川側から来る船は
家浦港、岡山側から来る船がこちらの唐櫃港に着く。
豊島美術館の近くまで戻ってきた。
棚田にあるベンチでひなたぼっこをしながら、街で買っておいたパンを食べて美術館の開館を待つ。
豊島美術館
真っ白なチケットをもらい、館内に向かう。
直線距離だと数秒なのだが、豊島の自然を楽しませるためか入館の道は森の中を通る遠回りの道だった。海も見えるように見晴らしのいい箇所もあってよかった。
豊島美術館の「母型」は、一日を通して、いたるところから水が湧き出す「泉」です。ふたつの開口部からの光や風、鳥の声、時には雨や雪や虫たちとも連なり、響き合い、たえず無限の表情を鑑賞者に伝えます。静かに空間に身を置き、自然との融和を感じたとき、私たちは地上の生の喜びを感じることでしょう。
この美術館の展示作品はひとつ。「母型」と呼ばれる作品だ。豊島美術館自体がその「母体」である。
中には小さなお皿や、ボールが置いてあるので気をつけて歩いてください。とスタッフからの説明があった。
事前情報を入れてなかったので、なんのことだかわからないままに美術館の中へ入ることに。中は土足厳禁、撮影禁止、会話は小さな声でとのことだった。
中は広いドームのような空間だったが、天井にぽっかりと大きな穴が空いていた。床を見ると、ところどころ水の流れたあとがあり、水たまりもできている。スタッフの説明の通りに小さなものも置いてある。
そしてもっとよく見ると床に小さな穴があることに気づいた。見続けているとその穴からコポコポと水が湧き上がって、水たまりに流れ込む。あるいは別の穴まで流れて落ちていく。
静かな館内に水の湧き上がる音と落ちていく音だけが反響していたのは不思議な感じだった。
たしかに気分がいいかもしれない。水をじっと見つめる人、寝っ転がっている人、みんな思い思いに作品を見ている。同じように寝っ転がってみたが、床は滑らかな触りごごちで気持ちいい。
朝早く、ひんやりとしていたので暖かさを求めて天井の穴から日差しが差しているところでしばらくまったりしていた。
目をつむると水の音と風の音だけが聞こえる。
心臓音のアーカイブ
ひっそりとしたプライベートビーチのような場所に美術館がぽつりと現れた。
ここには世界中の人の心臓音が収集されていて、それらを聴くことも、自分の心臓音を録音し、作品の一部にすることもできる。ここが一番来たかったところだった。豊島には心臓音を録りにきたと言っても過言ではない。
館内の展示は「ハートルーム」「レコーディングルーム」「リスニングルーム」の3つ。「ハートルーム」は誰かの心臓音が大音量で流れる暗い部屋だ。真ん中には電球があり、心臓音に合わせて点滅する。
明るくなった瞬間に壁にある無数の鏡に映る自分が見える。真っ暗になると本当になにも見えない。運良くひとりでこの部屋を堪能できたので貴重な体験だが、怖くもあった。
「レコーディングルーム」は心臓音を録ることができる防音室だ。
1台のモニターの前に聴診器が置いてあり、これを胸元に当てて録音する。録音データには短いメッセージの記入もでき、あとで「リスニングルーム」で聞くことも可能。
緊張して何回か撮りなおしをして、せっかくなのでメッセージも書いておいた。
「リスニングルーム」では、世界中から集められた心臓音をパソコンで検索して聴くことができる。日付、氏名などの検索条件から探したり、登録番号がわかれば指定して聴ける。
どうして心臓音を録りにきたのかをメッセージに書いている人もいた。定年だから来た、赤ちゃんが生まれたから、○年後にまた来ます!など、見ていて飽きないのでなかなかここから離れられない。
先ほどレコーディングした自分の心臓音もすでに入っていた。ここで恒久的に保存されていて作品の一部になったのだ。ハートルームで私の心臓音が流れるときもあるかもしれない。もしかしたら見知らぬ人に聴かれるのだと思うと不思議な感覚だった。
昼食。有名店を覗いてみたが混雑でいつ入れるのかわからなかったので、道路の途中にあった定食屋さんに入った。
サクサクでおいしい!
豊島美術館(再入場)
豊島美術館は再入場可能なので、午後にもう一度入ってみる。
日差しの差し込む角度や水たまりの流れが変わっていて、朝一に来たときとだいぶ印象が違った。寒い中原付で走り続けていたのでついでに少しお昼寝も。
探索
美術館でゆっくり休憩した後は島内を散策。島を一周してみる。
原付を返す時間が近づいてきたので港の方に戻ることに。
豊島横尾館
横尾忠則氏の作品が集められた美術館。
生と死をテーマにした作品が多いらしく、こちらも例に漏れずその通りだった。
撮影用のトイレと実際に使用できるトイレのふたつがあった(内装は同じ)
使用できる方も入ってみたが、1ミリも落ち着かなくて面白かった。
探索2
帰りの船の時間までまだあったので浜辺を散歩した。港からは少し離れているので人も閑散としている。
こんなに人がいないなら、とレア色のシーグラスを探してみたけどさすがになかった。
ぼんやりした後に港に戻り、高松港へと帰る。
高松(夕食)
一日中動き回ってお腹がペコペコだった。香川出身の友人に教えてもらった居酒屋に入る。人気店のようで、私のあとに入ってきた人は帰されてしまっていた。
疲れた身体に染み渡る!!
豚バラが入っていて嬉しい。砂肝も。他はなにがなんだかわからなかったけど全部おいしかった。
ラストスパートに骨付鳥。お皿に溜まった油をおにぎりに吸わせると……幸せ。
大満足したのでホテルに戻り、心臓音のアーカイブで作ってもらったCDを見てみる。
見ず知らずの人の心臓音が聴けたり、自分の心臓音が美術館の作品の一部になったことは初めてだったからかなりいい体験をしたなと今でも思う。
生きた証を残すなんて言うと少し恥ずかしいけれど、私は海が好きなので、豊島の静かで綺麗な海が見えるこの美術館にそれを残すことができてよかった。また何年後かに来たいところだ。
2023/3/19で検索するとおそらく私の心臓音が聴けます。
実はメッセージで思いっきり誤字をしていたので見ないでほしいですが
明日は夜の寝台列車で東京に戻る。日中の予定はなにも決まってない。
とりあえず早起きはするのでおやすみなさい。
【旅行記】香川3日目(直島)【2023】
高松港から行く、ひとつめの島は直島。
前回の記事はこちらから。
高松港
直島はアートの島として有名だ。いつかの台風で海に流されてしまった草間彌生のかぼちゃなどが置いてある。
アクセスも簡単で、高松港からはフェリーで約1時間、高速船で約30分ほどで行けるお手軽な島だ。実は岡山県の方が近くので、宇野港からならフェリーでも高速船でも20分あれば着くし安い。
始発便だったのと雨だったせいで高速船に乗る人は少なかった。
直島
宮浦港
始発便で来ると、バスの時間まで2時間くらい空くバグ。
周囲を散策して暇をつぶすことにした。港には船の待合所も兼ねたお土産、軽食売り場ががあった。屋外オブジェもあり、ここだけでも楽しめる。
バスの時間まで待てなくなり、開店したてほやほやのレンタサイクル店に飛び込んだ。雨の中、自転車を借りようとする人は他にいなかったため、すんなりと借りることができた。あと数時間で雨がやむ予報なのだが…
出発した瞬間土砂降りになり、全身びしょ濡れに。ここから上り坂が続くというのにどうして。
とりあえず屋根のある場所を見つけられたので休憩。雨はしんどいけれど同じように自転車に乗っている人は誰ひとりいなかったので、道が空いているのはラッキーだ。
雨宿りしていると突然猫の鳴き声が聞こえてびっくりした。脚にくっついてきてかわいい。
猫と遊んでいたらいつの間にか雨が上がっていた。
この島に来た目的の地中美術館の開館まではまだ時間が空いているので、もう少し島の探索を続ける。
黄色のかぼちゃ
アップダウンが激しい道をなんとか走りきった先は海だ。
朝一で来たつもりだったのだが、かぼちゃと記念撮影をする人がすでに数人並んでいた。
近くに宿泊施設があるようで、そこの宿泊客らしき人が散歩をしていた。このあたりで美術館の開館時間が近づいてきたので、再びアップダウンの激しい道を戻る。電動にしていてよかった。
地中美術館
「建築については、人間の心や精神の大切なところが表には出ないように、外から見えないものにしたい」
施主 福武總一郎(ベネッセアートサイト直島代表)
地中美術館はその名の通り地中にある美術館だ。
施主である福武總一郎氏が建築家 安藤忠雄氏に依頼したもので、上記の引用の想いや、瀬戸内の綺麗な景観を守るために建物が地下に作られたという。
地下にあるといっても自然光を多く取り入れているため明るく開放的だ。天候や時間帯によっても作品の見え方が変わるのが特徴で、安藤忠雄建築らしく、打ちっ放しコンクリート満載なのも楽しい。
この美術館は完全予約制で、入る時間も決められているので注意。
中は基本撮影禁止だが、一部は撮影可能だったのでその写真を載せていく。ただ、少しでも興味がある人は他人の感想などを見ずに実際に行ってほしい。
一部作品のネタバレをしているので、この章は見ずに飛ばしてください。
浮球工房までジャンプ
入り口方面を見る。曇っていたせいでぼんやりと白い光が差していた。これは確かに晴れた日、雨の日でだいぶ雰囲気が変わるだろう。
ここから撮影禁止エリアの館内に入っていく。館内にはクロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの3名の作品だけが展示されている。恥ずかしながらモネ以外は聞いたことがなかったのだが、実際に見たなかだとジェームズ・タレルの作品が一番グッときた。
「オープン・フィールド」ジェームズ・タレル ※ネタバレ
いわゆるインスタレーションで、一度に体験できる人数10人いかないほど。
案内されたのは引用の画像の通りの薄暗い部屋。壁には青いスクリーンが映し出されている。それにつながるように数段の階段があるだけだった。
「ここからはスタッフの指示に従ってください」とアナウンスがあり、まず階段の前に並ぶように言われる。次に「階段を登ってください」と。階段の最上部に着くと「一歩前に進んでください」「もっと前に」
もうこれ以上進めない。けれどスタッフは前に前にと指示している。恐る恐るスクリーンに手を伸ばすと、手はそのまま青いスクリーンの中に入った。
ずっと壁に映し出された映像だと思っていたものは、空間への入り口だったのだ。
100人は入るんじゃないかと思うほど中は広く、ぬるかった。青や緑、ピンクのゆっくりと変化する淡い光に包まれて現実味がない。ずっとふわふわしていて遠近感もない。この空間がどこまでも続いているようで、感覚があやふやだった。
この時の衝撃がいまだに忘れられない。
充分に展示を堪能して次の場所へ向かう。
浮球工房
出入り自由なブイアート作品を展示している家だ。単純にかわいいのでおすすめ。
I♡湯
実はびしょ濡れのまま島を動き回っていたので、高松に戻る前に銭湯に寄りたかった。
もちろん銭湯もアートの一種なのですごい。
銭湯が開くまでうろうろしていると、スピーカーで音楽を流しながら歩いていた島民のお兄さんに話しかけられた。
「俺のおすすめ教えてあげるよ」と言われ見せてくれたのがこれだ。
お兄さん何者?
この銭湯の中をざっくり説明すると大きな象の像+すけべイス+湯船の底に春画が描かれている銭湯だった。あとBGMがジャングルみたいで、時折低く鳴り響くなにかの鳴き声が聞こえていた。意外とゆっくりくつろげる。
中の詳細は撮れないので、気になる人は公式を見てください。
宮浦港
銭湯でさっぱりしたところで、船を待つついでのおやつタイム。
帰りに一気に晴れてきた。疲れた体に船のエンジン音と潮風が心地いい。
うとうとしてるうちに高松港に着いていた。
夕飯
どう考えてもカレーの気分だった。なるべくならスパイスカレーがいい。
血眼になってお店を探すと近くに「spice U up」という新しめのカレー屋さんがあったので向かう。
バニラにクリームチーズなど複数のチーズを混ぜ、はちみつと黒胡椒をかけたもの。このチーズアイスがめちゃくちゃおいしかった。チーズも濃厚で思い出すだけでたまらん。
高松散策
見たい建物があるので、腹ごなしに散歩をする。
あまり人気がない夜の地下広場でこれをみた時の気持ちといったら。
百十四銀行
お目当のひとつ。緑がかって見える部分は緑青のブロンズだそうだ。なんて大胆な…
香川県庁
こちらもお目当のひとつだ。丹下健三建築。
圧倒的な存在感でかっこいい。
ことでん
「ことでんに乗ってみたい気持ち」と「IruCaを使いたい気持ち」が最高潮になり、一駅(瓦町駅〜高松築港駅)だけ乗ってみることにした。
ことちゃんはとってもかわいいねぇ…
乗車時間は5分ほど。ガラガラでよかった。ことでん的にはよくないのだけれど…
高松港(夜)
ついでに夜の高松港を散策する。
歩き疲れてもう動けないレベルまで散歩をしていた。
明日も朝から島に行く予定なのでしっかり休まねばいけない。おやすみなさい。
次の日はこちら
【旅行記】香川2日目(三豊市)【2023】
志々島とお別れの日。
香川初日の記事はこちらから。
志々島
一棟貸し自体が初めてで、しかも島で唯一の宿泊施設。私以外は全員島民しかいない状態で過ごすこの宿は、本当に自分の家のように感じた。まだこの島を楽しみきれていないからもう何泊かしたかった気持ちが大きい。
本当は朝一の船で帰る予定だったのを眠くて名残惜しくて一便後のものに変更した。今日はガチガチに予定も組んでいないし、のんびり高松に戻れればいい。
築150年のこの家は、最後まで木の匂いに満ちていて居心地がよかった。チェックアウト時間までごろごろしても、船の時間までは余裕があることだし最後に港まわりを散策しよう。
日が落ちたあと、ライトも持っていない状態でここを歩けと言われたら正直怖すぎる。
時間が合えばこのヤギは放牧されている。
ふれあい館の中も静かで、時計の針の音だけが響いていた。入り口にあるソファーに腰掛けて足休めをする。
これ以上あまり遠くに行くのもあれなので、「休けい処くすくす」で船を待つことにした。おそらくもう開店の時間だ。
くすくすが開くと船待ちと思わしき人たちがどこからともなくやってきた。3人組のおじちゃん、若い女性が1人、男性が1人。どうやら朝一の便できて、島のめぼしいところを見てきたようだった。おじちゃんたちを起点に会話が始まる。どこから来たのか、なにをしに来たのか。
女性は大学生で、春休みを利用して埼玉から来ていた。青春18きっぷやヒッチハイクを使い、九州をまわってここまできた。この後はこんぴらさんに向かう。
おじちゃん3人組は全員香川出身だ。高校の同級生で、内2人は仕事をリタイアしており、もうひとりもそろそろ…という状態らしい。よく一緒に旅行をしていて、今回志々島に来たのも「なんだかんだで来たことがなかったから」だそうだ。
このあとはどうするのかと聞かれ、高松のホテルに行くだけだと答えると「これから車で父母ヶ浜に行くけど、よかったら来るか?」と誘われた。
面白そうだ。今日は高松の商店街を適当に歩くだけのつもりだったし、せっかくなので旅に同行させてもらうことにした。
三豊市・観音寺市あたり(ドライブ)
おじちゃんたちについて
ややこしくなりそうなので、おじちゃんたちのざっくりとした情報をまとめておく。
・Aさん
一番話好きで陽気。人懐っこい。セミリタイアして妻とのんびり暮らしている。
・Bさん
柔和。車の運転はこの人。耳が悪いようで補聴器を使っている。リタイア済み。
・Cさん
某会社の支店長。強面で渋い。東京、兵庫にいたこともある。もう少しでリタイア。
3人とも香川出身で高校の同級生で頻繁に旅行をしたり、仲間内のカラオケ大会を開いている。甲子園好きで母校を応援している。全員結婚していてAさん、Cさんは孫もいるらしい。
こがね製麺所
昼前。宮ノ下港に着くなり、おじちゃんたちの車に乗り込む。まずは腹ごしらえに近くにあるおすすめのうどん屋さんに行くことになった。
「食べるのが好きならサイズは中がいいよ」と勧められるがまま頼んだら、中は2玉分のことだった。予想外に多く盛られたうどんに驚いていると、同じように中を頼んだAさんが「意外と多かったね」と笑っていた。ほか二人はちゃんと小を頼んでいる。どうして。
作り置きだったのか、麺は思っていたより柔らかめだったが、スープの出汁が効いていてとにかく美味しかった。磯辺揚げもさくさくで美味しい。なんとか完食。福岡の牧のうどんを思い出す量だった。
父母ヶ浜
車を走らせてやって来たのは父母ヶ浜。ここは屈指の映えスポットなのだが、残念ながら天気は悪く微妙な写りに。条件がいい日はウユニ塩湖のように鏡面ができあがるという。
ウキウキでスマホを取り出したAさんに、父母ヶ浜の看板(夕焼けの写真が貼られている)と自分の写真を撮ってほしいとお願いされた。娘に送りたいそうだ。
「昔はなんもない浜辺だったのに、いつの間にこんな観光地になったんや」とCさんがぼやいていた。言われた通りここには若い人が多かった。洒落たカフェもあって、晴れた土日はもっと人が多いのだろうなと想像できる。
しばらく散策したあと、雨が降る前に行こうかと次の場所まで移動することになった。
車内ではBさんが運転席、Cさんが助手席、Aさんと私が後部座席という並びで座っていた。隣に座るAさんと必然的に会話が多くなる。
娘さんのことを聞いてみると、とても仲がいいようで、連絡もよく取り合うしこの前は一緒に高知に旅行しにいったのだと嬉しそうに写真を見せてくれた。
結婚していて音楽の先生をやっているらしい。今は家族と千葉県で暮らしている。「〇〇(地名)ってとこなんだけどわかる?」と言われた場所は、偶然なことに私の実家のすぐ隣の街だった。
高屋神社(天空の鳥居)
車はどんどん山道を登っていく。ときどき離合が難しいような道もあった。ここも映える観光地で道中わナンバーの車をよく見かけた。駐車場に車を止めてからお目当の鳥居までは上り坂を5分ほど歩いた山頂にある。
Bさんはあまり体が強くないのか、時折よろけていて心配で支えられる距離で歩くことにした。補聴器を使ってはいるけど小さい声だと聞こえにくそうだったので大きな声で話す。
学生時代は軽音楽部に入っていて、ずっとギターを弾くのが好きだったという話。奥さんとは病院で知り合って、お互いに耳が悪いという話。今は手話を習うために教室に通っているという話。勉強し続けてるのすごいですねと言うと、勉強をやめたらもっと老いちゃうからと笑っていた。
晴れていたらまた違った雰囲気になるのだろう。でも雨雲のかかった淡い景色もこれはこれでいい。ちなみに鳥居の奥は男坂になっていた。今まで我々が歩いてきた道が女坂だったのだろうか?
山頂のベンチで休憩をして、そろそろ戻ろうかというタイミングで雨が降り出した。
こんぴらさん
「せっかく香川に来たんだし、時間が大丈夫なら寄っていってやろう」というCさんのご厚意で、こんぴらさんのあたりを通って高松まで戻ることになった。雨で平日ということも御構い無しにこんぴらさんの参道には人や車の姿がある。
高松まで戻る道中は昔話や近況を聞いていた。「この前は車で兵庫の温泉に行った」「次はどこに行こうか」「Bの嫁さんも連れて来ればいい。ひとりでいさせたら心配だろう」話題はつきることがなかった。
Cさんは他二人に比べるとやや寡黙であった。そんなCさんが饒舌になったのは、AさんやCさんが参加しているというカラオケ大会の話だった。
始まりは数年前。同級生や知り合いを集め、定期的に開いていて、優勝すると結構な大きさのトロフィーがもらえる。カラオケと言ってもカラオケ施設ではなく、カラオケ喫茶で行われるらしい。次回は次の日曜日で、絶賛練習中らしいAさんがご機嫌に歌の録音を聞かせてくれた。正直めっちゃくちゃ上手くてびびり散らかしてしまった。
前回の優勝はAさんで、その前はCさん。家にトロフィーを持ち帰ると奥さんに邪魔だと言われてしまったという。写真を見せてもらうと、1mはありそうなトロフィーの横でCさんがにっこりと笑っていた。これはたしかに邪魔そうだ…。妻には尻に敷かれているとぼやいていたが、なんだかんだ嬉しそうに聞こえた。
道中にAさん宅があり、Aさんはそこでお別れとなった。「明日も暇だからどっか連れて行こうか?」と聞いてくれたが私は島に行く予定があったので、残念ながら遠慮させてもらった。
高松
ホテル&夕飯
「ここ俺が支店長やってる会社だよ」とCさんが指差したところを見ると、誰でも名前を聞いたことがある会社だった。だから兵庫にも東京にも来たことがあったのかと納得する。しかしそんなにえらい人だったのか…。高松築港駅の前でCさんが降りる。
高松築港から私が泊まるホテルは近く、一瞬でついた。こういうのは連絡先とか聞かない方がいいでしょうということで、Bさんとお別れをする。これが本当の一期一会か。
結局、厚意に甘えてホテルの目の前まで送ってもらってしまった。「運転も案内もありがとうございました。楽しかったです」と伝える。Bさんは「また会えたらよろしくね」と笑って去ってしまった。
3人とも元気に過ごしていればいいし、またどこかで会えればといいなと思う。
これから数日ここが拠点になる。古くからあるホテルで壁の薄さは気になったが、商店街は真横にあり、港へのアクセスの良さも抜群だ。ただこの謎の一体化枕は初めて見た。分離して2個じゃだめだったのだろうか…?
このホテルは旅行支援割引が使えた。クーポンを見るとなんと6,000円分も。ほぼ宿泊費1泊分ほどのクーポンがついてくるという思いがけないバグにあった。さっそくクーポンを握りしめて夜ご飯を食べに繰り出す。
17時すぎですでに列はできていた。早く来たのが功を制してすぐに入店。私が頼んだのは骨付鳥(若)、とりめし、讃岐くらうでぃ(日本酒)の3つだ。
骨付鳥は親(歯ごたえがあり旨味がギュッ)と若(普段食べてる鶏肉で柔らかくジューシー)の2種類がある。以前、「一鶴」という有名店の通販で食べ比べをしたところ、私は若が好みだったので今回もそうした。
ガツンとくるスパイシーさと塩味と油に目が覚めた。美味しい!!!最後にお皿に残った油をキャベツにつけて食べると幸せ……
讃岐くらいでぃは骨付鳥に合う!!と書いてあったので頼んだ。昔飲んだことがある気がするが、味は覚えてなかったので問題ない。甘酸っぱくて飲みやすい日本酒だった。口がさっぱりする。
高松中央商店街
食後の散歩に商店街を散策する。
この商店街は8つの商店街が合体してできており、アーケードの総延長は2.7Kmと日本一長い。ちなみにドームの高さも32mで日本一だ。
少し複雑な形になっているので以下参考用のマップ。私が泊まるリーガホテルゼストは兵庫町商店街の入り口にある。
丸亀町商店街
多くの人が想像する「商店街」とかけ離れた西洋風の景色。チェーン店もあり、人もお多くあり活気がある。
常磐町商店街
おやつを買いに来た。高松出身の友人曰く、洋菓子屋の「三びきの子ぶた」が美味しいらしい。お店はことでん瓦町駅の向かいにある。そして瓦町駅からは常磐町商店街が一番近い。ここまで来ると丸亀町商店街のような活気はなかった。
奥に見える建物はそごうの抜け殻にできた「瓦町FLAG」という商業施設だ。チラッとテナントを見たが、正直寂しい感じだった。商店街で事足りそう。
無事におやつも買えたのでホテルに戻る。
実は三びきの子ぶたのフルーツサンド以外にも、アーケードドームのあたりで「讃岐おんまい(和三盆を使ったミルクあんのおまんじゅう)」を買っていました。すみません。
もうひとつ白状すると、左奥にひっそりと見えるものは香川初日に買ってからずっと隠し持っていた「かまどパイ」である。バターをふんだんに使ったリーフパイで、ナッツがアクセントになっていてすごくすごく美味しい。自分のお土産にも買って帰るつもりだ。
明日からは島旅が中心になる。朝一の船に乗る予定なので、これらのおやつは朝ごはんも兼ねているのだった。軽くおやつを食べて満足したところで、おやすみなさい。
次の日はこちら
【旅行記】香川1日目(志々島)【2023】
今回は志々島の散策編です。
脱無職のせいで更新が遅くなりました。仕事は悪ですね。
初日?の移動はこちらから。
高松〜宮ノ下港
志々島に向かう船は香川県の西側にある三豊市の宮ノ下港から出ているが、高松は香川県のかなり東側なので移動しないといけない。レンタカーは借りずに電車で向かう。目的地の「詫間駅」までは快速電車に乗って約1時間かかる。
港の最寄りに到着。ここから港までは2kmなので徒歩でも行ける。が、時間がなかったためバスに乗った。
平日ということもあり、私以外の乗客は地元民のおばちゃんだけだった。それで目立っていたせいなのか運転手にどこまで行くのか心配されて、降りる停留所を教えてもらえた。旅先では頻繁に人の優しさを感じる。
港に着いた時点で船はまだ見えなかった。券売機も見当たらず不思議に思っていると、船がやってくる。どうやらデッキに券売機が設置されていて、乗船後に購入するという流れだったらしい。
デッキに座って待っていると、仏花を持ったおばあちゃんが乗り込んできた。島民だろうか?慣れた手つきで乗船券を買い、船内に座る。少ししてタラップが外れ、おばあちゃんと私の二人を乗せて船は出港した。20分ほどの船旅だ。
3月の冷たい風でも、海風を感じたくて、震えながらデッキに居座り続けた。
志々島
志々島は塩飽諸島に属する島民20人以下、周囲は3.8Kmと歩いて回れる小さな島だ。島に車は一台もなく(走れる道もない)、みんな徒歩か自転車だった。全盛期には1,000人もの人が暮らしていたらしい。
志々島に来た目的はお墓だ。正しく言うと両墓制の埋め墓を見にきた(土葬をしていた時代、ひとりの人間に対して、埋葬用の埋め墓とお参り用の詣り墓のふたつを設ける墓制のことを両墓制という)
実は船に乗っているときから既に港沿いにお墓が並んでいるのが見えていて、早く近くで見たくてうずうずしていた。一緒に乗っていたおばあちゃんは、私が写真を撮っているうちに民家の方へと消えていた。
両墓制の痕跡はこの塩飽諸島の他の島や、各地に少し残っているが、霊屋と呼ばれる小さな家の形をした埋め墓があるのはここ志々島だけ。作る人が減ったことや、台風やらでいずれ見れなくなってしまうと思って、どうしても早いうちに見に来たかった。
一般的な埋め墓だと民家から離れた土地に設けられるが、この島では民家のすぐ近くの海の目の前に作られていた。そして詣り墓が逆に民家のない山中に設けられていた。
過疎化に伴い高齢者が多くなり、山中まで行くのは大変とのことで本来の参り墓は使われなくなった。そして、この埋め墓が詣り墓の役目を担うようになった(いくつもの花が供えられていることからもこのことがわかる)
こうして両墓制から単墓制に変わっていく中でも、「中が見えて恥ずかしくないよう」「仏さんが暑がるだろうから」と霊屋にすだれをかけているところを見ると、今でも島民が故人を偲んでいる気持ちが伝わってくる。
ゲストハウスきんせんか
志々島で唯一の宿泊施設で、築150年以上の古民家を改装した一棟貸だ。ここに一泊する。
素泊まりのみかつ、島内には飲食店やスーパーがないので島に来る前に食料を買って来る必要がある。一応カップ麺や飲み物を買えるところはあるが、基本はないものと思った方がいい。
正面が母屋。右側に見える別棟には風呂・トイレ・キッチンといった水回り。
写っていないが実は左側にも2階建ての別棟がある。が、泊まるのは私ひとりなのでそちらは施錠されたままだった。
私ひとりには広すぎる家でワクワクが止まらなかった。しかもこの家にはテレビやWi-Fiがない。それもここを選んだ理由のひとつだった。島暮らしを味わえたらなと思って気軽に決めた宿泊だったけれど当たりでしかない。
居間には志々島に関する本などが置いてあり、自由に読める。こたつの上にも三豊市のガイドブックがそっと置かれていた。
次は風呂・トイレ・キッチンの別棟。
左扉がトイレで綺麗な水洗だった。右扉がお風呂。キッチンの奥には食器棚があり、よっぽど変なものを作ろうとしなければ食器や調理器具は十分すぎるほどあった。冷蔵庫には調味料も置いてある。
ボディーソープやシャンプー、リンスは揃っていた。歯磨き粉はないので注意。
島内散策
ゲストハウスきんせんかに向かう前に、港の近くにある「休けい処くすくす」という島で唯一のカフェに立ち寄っていた。ゲストハウスを運営する山地さん夫婦がこのカフェも開いているからとのことだった。
カフェの2階に団体客が来ているらしく、そちらを夫の常安さん、私の対応を妻・綾子さんがしてくれた。宿泊記録に名前を書き、ウェルカムドリンクとしてカフェのメニュー内から好きなドリンクをいただく。
色々話を聞いてみると、どうやらは綾子さんでなく夫がこの志々島の出身らしい。一度この島に来た時に大楠に神秘的な魅力に惹かれて、移住を決めたとのことだった。「行くまでの道は少し大変だけど、圧倒されるのでぜひ見てみてほしい」と。
霊屋を見に来たことを伝えると、両墓制に関する資料まで出してくれた。お墓目当ての人もいるが、志々島に来る人の大半はやはり大楠を目的に来ている人が多いらしく、少し驚かれた。
宿に荷物と漬物を置き、島内散策を始める。
小さな島だが坂が多くて運動不足の体には厳しい。民家は敷き詰められるように建てられていた。これほどの人が住んでいたのだ。栄えていた頃の様子が眼に浮かぶ。そうしてかつて民家だったものは今では土壁が見えているか、ほぼ倒壊している。島民は高齢でこれらを直すことも撤去することも難しいのだろう。廃墟は好きだけれど、こういったところの廃墟を見るのは過去を思うと物悲しくなる。
横尾の辻
志々島で一番高いところへ向かう。想像していたよりもしっかり山道だった。
横尾の辻に着くと手作りの木製ベンチや机が置かれていた。机にはプラケースがあり
、中に誰でも書ける旅の思い出ノートがあったので記念に書いてみることに。しかし途中で雨が降ってきてそそくさと退散してしまった。どしゃぶりになったときの帰り道が怖かったのだ。
大楠
道を戻っている途中で雨が止んだ。先ほど勧められた大楠を見に行くチャンスだった。大楠は観光名所なだけあって、あちらこちらに案内看板が立てられている。亀の。
これを追っていけば着くのだが、横尾の辻と違って下っていくような道が多かった。志々島診療所の近くに杖があったのでもってくればよかった…そんなこんなで到着。
正直に言うとそこまで期待はしていなかったのだが、実際に目の当たりにすると迫力があった。大きくうねりながら四方に伸びる枝。根は地中で枝以上に広がっている。巨大な生き物のようだ。樹齢はなんと約1,200年だという。
雨は完全に止み、雲も薄くなってきたから休憩がてら近くのベンチに座った。草木の揺れる音、鳥の声だけが聞こえる。人がいないというのも、また大楠の神秘性を高めていた。
天空の花畑
港へはどうやって降りようかと考えていると、天空の花畑なるものの看板を発見したので行って見ることにした。
志々島はかつて花の島だった。仏花としても使われるきんせんかやマーガレットを100軒以上の花農家が育て、生計を立てていた。ゲストハウスの名前でもある「きんせんか」はおそらくこれが由来だろう。かつての花の島を取り戻そうと島民たちが一生懸命に管理しているのがこの「天空の花畑」だ。
3月中旬はまだ寒く、あまり花は咲いていなかった。今回は天気に恵まれなかったのもあるし、次は花が咲く晴れた日に再訪したい。
港
日が暮れるまで海沿いを歩くことにした。ただ、宿までの道に明かりがないので、完全に暗くなる前までには戻らなくてはならない。
なんにも映んない鏡なの。ただ、しーんと銀色なの。その銀色の上をさ、さらさらさらって撫でるようにして、陽が沈んでいくんよ…
角田光代「八日目の蝉」
瀬戸内海を見るとどうしても「八日目の蝉」を思い出してしまう。舞台は小豆島。 凪いだ瀬戸内海をフェリーが進む様子の文章だが、内容も相まって印象的なシーンとしてよく覚えている。
映画版では本物の夕暮れの銀色に輝く瀬戸内海が映し出されていた。私もこの景色を見たくてここまできたのかもしれない。いずれ小豆島へもいきたいなぁ。
「休けい処くすくす」の近くを通ると、店じまいをしている山地さん夫婦に出会った。綾子さんが駆けつけてくれて「これすごく甘いからよかったら食べて」と大きなデコポンを手渡してくれた。漬物もデコポンもいただいて本当にありがたい限りだ。夕飯が足りないかもと思っていたので本当の本当にありがたかった。
「家あっちの方なの」「なにかあったら連絡してね」そう言って山地さん夫婦は自転車に二人乗りをして港とは逆方向に走っていった。
こうやってその土地に住む人の生活に見られると、旅が好きだなぁと思う。自分が部外者であることも心地いい。どこに行っても人の日常は続いている。その日常の一部に関われることができたなら、もっといい。
だんだん日も落ちてきた。私もそろそろ宿に戻ろう。
夜
暗くなる前に宿に戻ってこれた。宿の門がある真正面の家は部屋の明かりがついていたが、他の建物は廃屋のようだった。明かりの少なさから、島民が少ないのだと実感する。
お風呂場に向かう途中、庭に出て泊まる家を眺める。ひとり、ここに取り残されてしまったのではないかと思うほど静かだった。
ブラインドの降ろし方がわからなかったのでこのまま入った。窓の方向に人の住む家はないのでセーフ。
遠く、島が見える。なにもない田舎と言えばそれまでだが、誰もいなくて静かなのは贅沢なことなのかもしれない。
足りませんでした。
買ってよかった金ちゃんヌードル。大きなデコポンも頼もしい。左はおまけの日本酒。
お酒を飲みながら想い出ノートを読む。びっしりと書き込んでる人もいて読み応えがあった。中には遠方から来る人も、長期滞在したという人も。島の中の印象に残った景色を絵にしているものあった。様々な人間がここにいたんだなぁ。ビジネスホテルも旅館も同じだろうけど、こうして自分以外の人間が泊まっていたことや想いが可視化されるだけで少し不思議な気持ちになる。人がそばにいない方が人のことを考えられるなんて。
いよいよ眠気もピークで、布団に潜りこんだ。明日は雨らしいから高松に戻って商店街の散策でもしようかなと思っている。おやすみなさい。
次の日はこちら
【旅行記】香川0日目(サンライズ瀬戸)【2023】
無職になりました!
なので香川に向かいます。
次の仕事は決まっているのでにわか無職ではあるが、期間が空くのでこの間にどうしてもやりたいことがあった。
それは「寝台列車に乗ること」と「両墓制*1のお墓を見に行くこと」だ。
寝台列車。車両の老朽化でいつかなくなるかもしれないから、その前に乗っておきたい。前々からそう思っていたけれど中々行くタイミングがなくここまできてしまった。
今回乗るサンライズ出雲・瀬戸は人気の電車らしく、乗車日の1ヶ月前に予約しないとチケットが取れないことも多いらしい。みどりの窓口に行けば部屋の場所を選べるのだが、さすがに行けないのでネット予約で我慢。豪華な個室や二人用の個室は数分足らずで埋まっていたが、「B寝台 シングル」という一番多い個室のチケットは無事に取ることができた。
退職日、平日ど真ん中の夜に東京駅から寝台列車に乗り込む。このころは気持ち的にだいぶ疲れていたので、ここに来てもまだ旅に出るという実感はなかった。
サンライズ瀬戸(夜)
サンライズの到着を知らせるアナウンスが流れると、ホームにカメラを持った人が多く集まった。
私の部屋は2階だった。瀬戸内海がよく見える側で、晴れていると朝日が見ることができるらしい。翌日は晴れる予報だったのでアラームを設定して朝日チャレンジをする。
個室は思っていたよりもだいぶ広かった。入り口は160くらいなら腰をかがめる必要もないほど天井の高さがある。アメニティは浴衣、コップ。コンセントもついているので充電ができる。ただWi-Fiはないけど快適だ。でも結構揺れがえぐくて出発直後すぐに酔い止めを飲んでいる。
サンライズは東京を出発して都心からどんどん離れていく。明るいビル群。通り過ぎる駅のホームに立つ人々。車窓の外を流れる景色を見ていると、これから旅に出るのだと少しずつ実感してきた。
神奈川に入ったあたりだろうか?動く秘密基地みたいでずっと見ていられる。
まだ起きていたいので寝転んで音楽を聴く。これが高純度な夜の生産地…
2階個室は窓が湾曲しているおかげで、寝転がると星が見えた。興奮していてまだまだ起きていたかったけど、朝も早いので就寝する。おやすみなさい。
サンライズ瀬戸(朝)
旅の朝は早い。アラームが鳴る前に起きた。
これなら瀬戸内海の朝日も見られそうだ。岡山に着く前に着替えなどを済ませる。じわじわと太陽が昇っていって街が目を覚ましていく。まだ大半の人は家にいるであろう、朝のこの空気がすごく好きだ。
岡山駅で列車の切り離し作業が行われて、後続は出雲へ向かう。朝日を見る以外に早起きしたもう一つの理由がこれだ。
ただ、私が乗るのは先行の高松に行く列車なので、実は切り離しを全て見ることはできないのだった…(少し写真を撮ったあとに急いで車内に戻った)
列車は岡山を後にして瀬戸大橋を渡る。
角田光代の”八日目の蝉”が好きで、原作の小説と映画で特に印象的だったのが瀬戸内海の描写だった。夕焼けに照らされた凪いだ海がキラキラと光って、その上を大きなフェリーが滑るように進む。実際は夕暮れの海を眺めるという描写なのだが、朝焼けのおかげで陽が沈んでいるようにも見えてそれもまたよかった。モデルである小豆島には今回行くことはできないが、少しでもその気分を味わえた。
写真や動画を探せばいくらでも似たような瀬戸内海は出てくるけれど、やっぱり生で見ると感慨深くなってしまう。瀬戸大橋の上を渡るこの区間は、時間にしたら10分足らずの短いものだ。それでももう既に寝台列車で香川に来ることを決めて良かったと、満足していた。晴れてくれて、本当によかった。この景色は多分一生忘れないだろう。
高松
朝7時くらいに高松に到着。
宿泊予定の離島に向かうために三豊市の方まで移動しなくてはいけない。特急電車が来るまでまだまだ時間があるので、高松市内を散策することにした。
朝の腹ごしらえとして駅の近くでとりあえずうどんを食べに行った。出汁が見当たらなくてこのまま食べてしまった…
食後は港でぼんやりと海とフェリーを眺めていた。海が綺麗で、風もなく凪いでいた。想像通りの瀬戸内海で興奮しっぱなしだ。
大きなボラが群れを作って泳いでいた。都内のボラは美味しそうに見えないけどここのボラは水が綺麗なぶん美味しそうに見える。
瀬戸内海はかつてスナメリが多く見られたらしい。環境の変化で現在はあまり見られないようだが…
時間までずっと海にいてもよかったけど、せっかくなのでもう少し観光をする。その前に商店街近くのマルナカ(スーパー)で宿泊時の飲食物を購入した。その後は港近くの玉藻公園に移動。
全国でも珍しい海水のお堀とのことで、コイではなくタイの餌やりができた。ぷりっぷりとした体格のいいタイが餌を食べにきて面白い。
なんやかんやで移動の時間になり、高松駅に戻る。いよいよ塩飽諸島の志々島へと向かう。
次の日はこちら
*1:埋葬地とお墓詣り用の二つのお墓を設ける墓制のこと
【旅行記】静岡(富戸)【2022】
ぼくのなつやすみ2のOPを見て泣いた。
ボクくんになりたい……
ってことで、ぼくなつ2の舞台に行ってきたときのやつです。
夏休みを取り戻しに行こう。
富戸駅
ぼくのなつやすみ2の舞台は、静岡県伊東市にある富戸港という漁港だ。東京からだと、新幹線を使えば乗り継ぎを含めて2時間かからないくらいで行ける。
そんなお手軽な富戸だが、個人的に旅といえば早朝なのでほぼ始発の新幹線で向かった。
富戸駅についたのは8時頃。ダイバーの聖地でもあるらしく、一緒に下車したそれらしき人たちは次々と送迎車に乗っていく。歩いて向かう人は他にいないようで、早速ひとりぼっちになってしまった。目的地の富戸港までは1.7Km、徒歩で20~30分はかかるので当たり前といえば当たり前だが…
ただ今回はぼくなつ2の聖地巡礼の他に、伊豆半島で盛んな”イルカの追い込み漁”の証を見つけたいと思っている。具体的にはイルカの供養塔と、市販されているイルカ肉だ。そのためにひたすら歩く。
帰りが怖い坂だ。
宇根展望台
よさげなところをみつけて早速寄り道をする。
この海岸線沿いを今から歩いていくのか…?
この日は曇り予報だったけれどじわじわと晴れてきていた。港に着くころにはだいぶ暑くなりそうだ。それでもただひたすらに歩く。
富戸港
30分かからないほどで富戸港に到着。ぼくなつ2のOPの場所は、この建物を超えれば目と鼻の先だ。噂によると、このあたりにイルカの供養塔もあるらしいのだが見つからない。
このあたりにもダイビングの送迎車が出入りしていた。浅瀬では海水浴をしている家族連れ。
ぼくなつ2 OPの場所
OPの場所に到着。知らない人もいると思うのでまずは参考動画から。OPは2:30あたりから始まる。
漁協の建物をすぎるとすぐにOPの舞台に使われた場所につく。切り通しに堤防、特徴的な円形の港。なるべくOPと同じ画角で撮るようにしたので伝わるはず。比較用に動画内で同じ場所が写っている時間を書いておいた。
ぼくなつ2の発売からだいぶ経っているが、富戸の景色はOP映像で見たものそのままだった。蝉の声が響いていて、穏やかな波の音が聞こえている。本当にゲームの中のようで、幼少期にここで過ごした夏休みのことを思い出し、ノスタルジックな気持ちになった。ここで遊んだなぁ……。富戸に来たのは初めてだし、そんな思い出ももちろんない。
散策
透明度が高く、魚が泳いでいればすぐにわかる。正直こんなに綺麗だとは思ってなかった。この堤防で海と魚を眺めているだけで、あっという間に時間が経っていた。
日が高くなるにつれ、晴れてきた。汗が止まらないので堤防をあとにして散策を続けることにする。
さすが聖地というべきだろうか、ダイバーはいたるところにいた。私はカナヅチでまったく泳げないので、気持ち良さそうに泳いで潜っている彼らが羨ましくもあった。
そうこうして駅に戻ろうとしたとき、ふと目についた。
あった!!
文字は薄れていて全部は読めないが、うっすらと供養…と書かれている。これがイルカの供養塔だ。伊豆半島にはこういった供養塔がいくつかあるらしい。見つからずに諦めかけていたので、帰りに見れてよかった。
駅に近づき、行きに寄れなかったスーパーを覗いてみる。残念ながらイルカ肉は売っていなかったが、朝獲れた魚をお刺身にしてくれるサービスがあったり、富戸産の魚たちが並んでいて漁港を感じた。
伊豆急行リゾート21
ホームで待っていると派手な電車がやってきてぎょっとした。別料金のかかる特急がきたのか…?いや、でも時間はあっているはず…。同じホームにいた二人組の妙齢の女性も同じ不安を持っていたのか話しかけられた。とりあえず乗ってみましょうと、恐る恐る乗車。
「伊豆 キンメダイ 電車」で調べると”伊豆急行リゾート21”がヒットした。地域PRの電車のようで、それのキンメ電車というもののようだ。車内にはいたるところにかわいいキンメダイが描かれている。海が見やすい横向きのシートもあり、人気で座ることはできなかった。
別料金を取られるということもなく無事に熱海に到着した。熱海で駅弁を買い、この日は帰宅。
こうして文にしてしまうといまいちノスタルジーを伝えることができないのだが、富戸の港を歩いていたとき、私はたしかに夏休みを取り戻しているなと感じていた。
アスファルトの焼けるにおい、蝉の声、波の音、とめどなく流れる汗。大人になってからは夏は暑いからと家にこもりがちだったが、たまにはこうやって五感をフルにして外で昔のように遊ぶのもいいかもしれない。
ぼくのなつやすみ2が好きな人はもちろん、ダイビングが好きな人も、仕事や喧騒に疲れた人もみんな富戸に来よう!いいところでした。
【旅行記】北九州2日目(旦過市場・門司港・巌流島)【2021】
北九州2日目。
TrySailのライブは今夜もあるけど、夕方の便で帰るため参加できず。
門司港あたりを散策したのでその写真をメインで載せていきます。
北九州2日目
旦過市場
燃やされまくっている(物理)味のある市場。このあとくらいに放火されちゃったんじゃないかな。
早朝だったのでお店が開いておらず、シャッターだらけでより怪しい雰囲気に。
次は日中のにぎわってるときにも行ってみたいな。
門司港
建築めぐりをしていく予定だ。門司港レトロってやつですね。
屋台が出ていたので梅ヶ枝餅を購入。ほかほかでおいしい。
この他にもホットワインを売ってる店を見つけて飲んだりしていた。この日は寒かったので身に染みる…
巌流島
うろうろしていると船のターミナルを発見。
船の時刻表を眺めていたら巌流島(宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘した島)に行けそうだなと思い、突発的に乗船することにした。
同じ港から対岸の下関行きの船も出ているようで、そっちはほぼ満員になっている。なお、巌流島行きは……
デッキは海水が飛んでくるので注意。
巌流島までは10分ほどであっという間だった。
巌流島に着くとたぬきが出迎えてくれた。
船の乗務員さんがごはんをあげているとのことで、人が近づいても逃げる気配はなかったが、さすがに触る勇気はない。
正直言ってなにもなかったけど穏やかでいいところだった。釣り用の突堤もあったから夏は釣り人が多そう。釣り遠征もしてみたいね。
小さな島だが、次に来る船に乗って帰ろうとすると意外と時間がないことに気づいて早足で船着き場に戻る。
強風で海がうねっていて時折浮いた。つけていたマフラーは海水で湿ってしまったが楽しかった。
新海運ビル
門司港に戻ったあとは新海運ビルに向かう。
海運会社として建てられたビルで、内装に船をイメージさせるものが使われていたりするので見てみたかった。現在は雑貨屋さんのテナントが多く入っているようだった。
椅子の種類がバラバラで持ち寄せてきた感があってよかった。
ビルのすぐ裏は海だ。
門司港に戻り、空港へと向かう。
北九州空港〜羽田空港
小倉から出ている高速バスで空港まで向かう、その前にシロヤベーカリーでオムレットを買うチャレンジをする。
えげつない行列ができていたけど、なんとかバスの時間に間に合った。
大体明るいうちに帰るから搭乗中に星が見えるのが新鮮だった。
ご飯がおいしいし海は綺麗だしいいところだ…。また来ます。
追記
2023年のTrySailツアーが発表されて、その中に北九州公演があった。
行きます。